2014年5月18日日曜日

最近レポート3

また恥ずかしながら最近書いたレポートです。青色LED訴訟の中村氏とノーベル化学賞の田中氏を企業経営の立場から検証しました。いつも通りですが、突っ込み大歓迎!!!お時間がありましたら、ぜひ読んでみてください。


【設問】企業経営の観点から中村修二氏の行動と田中耕一氏の言動のどちらを支持するか。
企業経営の観点から考え中村修二氏の言動を支持する。最初に発明の概要、発明が会社に与えた経済効果、対価としての報酬について説明する。次に日米の特許への取り組み方の違い、雇用体系の違いについて比較し、最後に両氏の行動と言動について見解を述べる。
 日亜化学の研究者であった中村氏は1993年に青色LEDの開発に成功した。これはソニーや三洋電機など大手企業も開発できなかった優れた技術であり、関連する特許を侵害せずに他社が青色LEDを製造することは難しいといわれた。中村氏は社内規定に定められた褒章金2万円を対価として受領したが、退職までの11年間で受け取った給与は平均的な同期社員と比べ6200万円弱多かった。中村氏は退職後の2004年に対価請求訴訟を起こし、東京地裁は日亜化学の独占利益を約1200億円、中村氏の貢献割合を50%と認定した。
一方、島津製作所の研究者であった田中耕一氏は、2002年にMARDIの発明でノーベル化学賞を受賞した。田中氏は入社間もない1985年に実験中の偶然で新技術を発見し、上司や同僚のサポートを得ながら1988年に学会で発表。これがノーベル賞受賞につながったのだが、島津製作所はこの技術を、特許や利益に結びつけることができなかった。受賞後田中氏は役員待遇に昇進したが、高額の褒賞金は受領していないようである。
 当時の特許への取り組み方は日本と米国では大きく異なる。日本企業の特許出願目的は他社からの権利侵害をふせぐための防衛特許の要素が強く、未利用特許が全体の40%以上にのぼっていた。特許法には研究者保護の観点から、職務発明は会社に帰属するものの従業員は相当の対価を得る権利を持つと規定されている。しかし前述の要因から特許は質よりも量が重視されていたため、特許の質に応じた報酬設定という考え方は芽生えにくかった。また終身雇用と手厚い福利厚生をベースにした日本型雇用においては、特定の個人だけ特別扱いするのは不公正だという考え方が強かった。
一方米国は1979年にカーター大統領がプロパテント政策に転換したのをきっかけに、1980年以降はレーガン大統領のもと知的財産保護による国家競争力回復が強力に推進された。そのため研究者には成果主義の人事制度が適用され、職務発明の成果は会社に帰属する契約が結ばれる一方、研究者は多額のストックオプションを得ることができた。また研究職には他社からのスカウトも頻繁にあり、職場選択の自由があった。

ここまで述べたように、当時の日本の特許環境や雇用体系を勘案すれば中村氏の行動は評価できない。なぜなら開発報酬への理解が乏しい環境下、中村氏は社内規定以上の報酬を得たのみならず、退職して訴訟まで起こしたからである。一方田中氏は島津製作所の研究者という立場で、研究開発評価における日米間の違いや日本の研究者の処遇改善などを日本の技術促進の観点から述べており、企業経営の観点から評価することができる。しかし日本政府が今後、知的財産の活用を国家競争力強化の観点から推進するのであれば、中村氏のような行動は評価される。それは研究者の開発モチベーションを高めるとともに企業による研究開発を強化させ、ひいては国家競争力促進に寄与するからである。

0 件のコメント: