2008年10月28日火曜日

中小企業融資

連日同じようなコメントで恐縮です。
新銀行東京の設立時を思い出してください。2000年~2002年にかけての東京都(石原都知事)VS大手銀行の外形標準課税導入をめぐる迷走。最終的に敗訴した石原都知事が”大手銀行は公的資金を入れてもらっているのに、中小企業融資を増やさないでケシカラン!”とばかりに設立したのが同行でした。当初は中小企業ローンを束ねたジャンク債市場を設立し、中小企業向け信用創造機能の向上などと上手い話をぶち上げていましたが、結果はご覧の通りです。無担保・無保証を売り物にスタートし創業来赤字を継続、結局東京都の資本を食いつぶしてますよね。結果的に納税者負担になったわけです。現状ですら不良債権比率25%と言われており、大手行と比べれば規模は小さくともその比率は信じられないサイズ。
私は中小企業融資が悪いと言っているわけではなく、不況下でのやり方に問題があると言いたいのです。銀行は預金者の大切な資金を運用しているのですから、慈善事業的に融資を増やしていくことは出来ません。5~10年前の流れは、景気悪化→信用創造機能低下→自己資本比率低下→公的資金投入+株などのリスク資産圧縮+不良債権消却→保証協会などの公的サポートの協力を得ながら、徐々に信用創造機能回復、のパスを通りました。
現在政府が実施しようとしていることは、”大手銀行による中小企業向け融資拡大+株保有規制の緩和”。それで景気が回復していけばいいのですが、失敗した場合、①不良債権増加②株の含み損による資本既存、となり、再び自己資本比率低下→公的資金投入というパスを通ります。同じ公的資金投入であれば、多数の銀行に注入するよりも、①保証協会の保証枠拡大、②政府系金融機関への資本投入による中小企業融資増強、このような形で一極集中で実施したほうが、失敗したときのダメージが少ない(=金額的には同額の毀損でも、金融システム崩壊によるパニックは少ない)と思うのです。
中小金融機関にまで公的資金投入して信用創造機能を支えた末、金融機関の破綻が発生すれば預金者の取り付け騒ぎが起こります(10年前、中小の信用金庫、信用組合では実際にありました)。そうすれば壊れてはいけない、上層部の信用創造機能まで破壊されませんし、地域経済に与える局所的なダメージが大きすぎるはず。確かにそれを実施することにより、民間の信用創造機能低下というデメリットはあります。しかし、信用創造機能はゼロになっている訳ではなく、金融機関の与信判断で貸せるところまでは貸している訳ですから機能自体が崩壊しているわけではありません。
分かり易く言うと、”貸せるVS貸せない”の線があるとしましょう。不景気下では、倒産率が上がるのでその線は上げざるを得ません。そうしないと預金者は不安で逃げていきますよね。線を上げることで漏れてしまった借り手企業や、そもそも線よりも下にいた企業に対して融資をするのは、民間ではなく保証協会(=実際に彼らは保証するだけで貸しませんが、、、)や政府系という事です。
民間が貸すにせよ、政府系が貸すにせよ、大切なことはデフォルト率を勘案した金利を取るという事です。最近では金融市場不安定化に伴いクレジットカーブは大幅にベアスティープしています。社債VS国債のスプレッド増加幅は優良企業で少なく、投資不適格級で大きいという事です。当然、中小企業の格付けは投資不適格級(簡単に言うと日本では社債発行出来ないレベル)ですので、要求されるプレミアムは大きくなるわけです。このプレミアムは景気回復にディレイする形で縮小しますので、その際金利は低下方向で見直す形なります。(所謂クレジット循環)
話はそれますが、改正貸金業法の施行に伴い、前述の”そもそも線より下にいた企業”は下からも炙り出されている訳です。ここで炙り出された企業に貸すとなると、やはり民間では難しいのでは?と考えるのですがいかがでしょうか?

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