2008年10月27日月曜日

貸し渋り

過去に何度も書きましたが、元・銀行支店営業担当者として、この件についてはウルサイです。
あのですね、銀行は貸し渋りしているのではなくて、貸し過ぎを回収しているのです。好景気下で業績を伸ばすために、デフォルト率を度外視した金利で貸し出し増加。景気失速に伴い、貸しすぎていた部分を回収。当たり前の話なんです。
中小企業の多くは、資金繰りに困っている。中期的な金繰り安定のためには、長期運転資金(1年以上の貸し出し)を入れるのが有効。しかし長期資金であれば、収益返済(本業の儲けでコツコツ返済していく事)が必要になるのですが、①そもそも収益が長期間に渡って安定しているわけではない、②景気失速局面で、昨年度の収益性が保たれるとは思えない。こんな状況下で、①過少保全(=担保不足)②収益返済能力なし③デフォルト率を無視した低い貸し出し金利、アナタが貸金業者だったら融資しますか?私だったら貸しませんね。
2週間くらいに前に、(私の大嫌いな)毎日やっている某ニュース番組の特集で、某中小アパレル卸業者が貸し渋りで困っているとやってました。社長曰く、『銀行は困ったときに助けてくれないんですよ。毎年継続していた手形貸付を今年は継続してもらえなかった。黒字を出しているのにおかしな話ですよね。。。』私はその会社の決算書を拝見したわけではないので詳しく分かりませんが、社長の話から類推するに、短期運転資金(1年)を無担保かつ約定返済なしで借り続けていたのでしょう。取引銀行に対し、1年後満期の借入手形を毎年振り出していたのでしょうが、おそらく随分前から転がし続けたんじゃないでしょうか?前述の部分と若干重なりますが、1年手形をロールさせた時点で、この借入は実質的に長期運転資金です。これを約定返済出来ないという事であれば、これは赤字運転資金なのです。取引銀行も突然、”継続不可”を打診してきたのではなく、それまでに何度も、”担保追加要請”、”(少額でも構わないので)約定返済付与要請”を実施してきたはずです。それが出来なかったから、継続中止の申し入れになったと思うのですが、実際どうだったのでしょうか?
弱者にフォーカスすれば視聴率は稼げますが、これは本質をねじ負けているだけでなく、景気不安を煽っているわけです。昔から”景気”の”気”は”気分”の”気”と言いますが、世間のムードとかって大切なんですよね。こういった報道で倒産寸前の事業者が、『(本業悪化が本来要因なのに)貸し渋りで潰れそうだ!』と合唱連呼すれば、地元の政治家が動きます。最終的には国政も動かす大きな流れが出来るでしょう。国が動いて、保証協会枠の拡充でもなんでもやればいいじゃないですか?10年前にそれやって良かったですか?中小企業は救われました。信用創造機能を助けました。政策としては大正解!でも保証協会の焦げ付き具合はどうなってますか?火の車ですよね。銀行をけしかけるのはいいけど、それで損した分は誰が責任とるのですか?
少なくとも、この手の報道に腹を立ててる銀行マンは多数いるはずです。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

確かに中小企業に融資するのはリスクが高いけど、見殺しにしちゃダメなんじゃない?
大手にはできない、中小企業ならではの仕事だってあるし。大企業も含め、もう少し選択と集中は必要なのかもしれませんが、中小企業が今より元気になれば、もっと日本は良くなると思う。中小企業を応援したいなあ。
公的資金も注入されてるんだし、半公務員の銀行さんは日本の将来のため、中小企業に融資してくださいませんかね。そんで銀行が厳しくなったら、また公的資金を入れてもらえばいいじゃん。