2019年4月9日火曜日

和牛の受精卵や精液が中国に持ち出された事件

「受精卵、計620万円で販売」 和牛牧場主を起訴

こんなニュースが世間を賑わしている。

この業界にひと時身を置いた経験でもの申す。本件は出来心的な犯罪ではなく、随分前から頻繁にやっていたのではないかと推察する。

調べてみると容疑者は牧場主と記載されているが、かなり大規模な畜産事業者という表現が正しい。実際に和牛の一貫生産ができる民間事業者というとそれほど多くない。

肉牛には行政と景気サイクルが密接に関連している。そのためバリューチェーンのどこが儲かるか、どこが損するかは、政策、規制、景気により変動する。しかしバリューチェーンのすべてを抑えれば、その変動を平準化できるので、そういう意味でこの業界では勝ち組と言って良いのだと思う。この辺はあまり書き過ぎないようにしておく。

そもそも10年以上前にオーストラリアに和牛の精液ストローが流出しており、同国は「WAGYU」というブランドで輸出もやっている。もっともこれは同国の雌牛に和牛の精液ストローを人工授精したものなので、交雑牛という表現が正しい。

今回のケースは受精卵なので、正真正銘の「和牛」が流出したことになる。

「和牛」ブランドは、政府、都道府県、農水、業界団体、民間事業者が協力して作り上げてきた大切なものである。食文化として海外に普及していくのは良いことだが、それを私利私欲のために使用するのは明らかにルール違反である。

本件はしっかりした処分と、再発防止策を徹底していただきたい。

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