2017年8月8日火曜日

革新機構、苦戦のベンチャー投資   官民ファンドの実像

週末の日本経済新聞に掲題の記事があった。現在の業務に関連する内容なのでちょっとだけコメントしたい。まぁ、、、関連すると言ってもオイラタチは「投資してもらう側」で、一応オイラは金融出身者ということで財務(資本調達)を統括するため、官民ファンドの方々とはよく意見交換させてもらっている。

産業革新機構は2024年までの時限立法で設立された官製ファンド。事業再編分野ではJDL、ルネサス、東芝メモリの共同買収案件に参画し、大口の資金提供者として存在感を発揮。投資リターンという意味でも結果を出している。

しかしこれらの大口投資の陰で、ひっそりと技術系ベンチャー投資が実施されているのはあまり知られていないことだろう。オイラが言うのもなんだけど、経済産業省傘下の投資ユニットなんだから、こういう投資をやって当たり前と言えば当たり前か(笑)
革新機構は設立間もないアーリーベンチャー主体に投資している。しかしそのパフォーマンスが(この記事では)あまりよくないとされている。EXITした案件の17%(件数ベース)しか元本回収できていないというのだ。

グローバルのベンチャー投資、特に技術系ベンチャー投資事情を知らない人はこのパフォーマンスに目くじらをたてるのだろう。しかし、これってそんなに変な数字じゃないよ。

だってね、

  1. 技術ステージの若いアーリーテックに投資しているんだから件数ベースの投資成功率は低いに決まっている。
  2. 裏返せば成功時の投資レバレッジの高さを考慮していない。
  3. 90件程度投資しているうちの現在までに売却した24件のみを分母に計算している時点でサンプルに偏りがある(残りの案件は引き続き技術開発中)
  4. 技術系ベンチャーの技術、事業PoC完成には時間がかかる。
  5. 平均投資期間4年にも満たない段階で投資パフォーマンスの精査をしている時点で本末転倒。
このアフォーな記事が、頭のいい人達を洗脳して、「技術系ベンチャーへの投資は税金の無駄遣い」的な風潮になったらヤダナ~~。もっとも「技術系ベンチャー風味のハリボテ君」が結構いるのも問題なんだよね。こういう輩のせいで世間的な評価が下がってしまい、必要な資本を獲得できず、開発途中で断念するベンチャーが増えないことを祈るばかりだ。


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