全部突っつくと本が書けちゃうくらいなので、突っつきたい論点を下記に列挙した上で、一番美味しそうなところだけ突っつくことにしたい。
- AI導入=「ただの情報整理」というのが満載
- 「ただの情報整理」=「データベース構築」も規制、組織外、組織内の軋轢で実現しなかったものを出来るようにしました的なものが多い(AIとまったく関係ない)
- AIのカテゴリー(階層)がバラバラ
- 永遠のテーマである医療機関のデータ共有手法についてはまったく解決されてない。
- 沢山の問題を放置した上で、結論「これが実現すれば医療費を大幅に削減できる」とはこれいかに。
さてと、、何番を突っつこうかな?
今回は2の論点で全体をぶった切ってみよう。
あのですねAI(人工知能)には沢山種類があることは日経の記者さんもご存知ですよね。優秀(複雑)な順に申し上げますと、深層学習>機械学習>推論>制御プログラムという感じだ。将棋やオセロのAIは推論に該当し、エアコンのセンサーとかは制御プログラムなのは分かるよね。
どのレベルにおいてもデータベースが必要であり、データベースの質と量によって生み出される結果(制御、推論、学習)のクオリティーが決まるのはなんとなく理解できるよね。今回の日経の記事は全体的にデータベースのリッチネスを高めるという切り口で書かれている。でもこれってAIの技術革新というよりも「どのデータを」「どのように取り込むか」という極めてヒューマンタッチなものばかり。
だからもっと分かり易く言うと、「これまで放置していたデータを、最新技術であるAIに活用するために開放することにした。これで医療の将来は明るい。」という論旨なのである。
つまり、、、、、AI技術の発展ではなく、AI「活用」に向けた組織決定なのである。
今回紹介されている取り組みを悪しき情報障壁の側面から説明すると、
①研究開発部門内の情報障壁:
ラボ内での化合物VS細胞実験(スクリーニング)データを整理していなかった。化合物スクリーニングは力技的なところがあり、沢山の失敗の上に新薬(化合物候補)の発見がある。でも失敗データは宝の山であり、こういうデータをこれまで整理せずに放置していた。そして諸先輩方の失敗を踏み台にして成功を導き出そうという「サラリーマン下克上」を試みる勇者が現れなかった。
②研究開発、臨床開発、診療の情報障壁
候補化合物のラボデータ、臨床試験における投与後のデータ、上市後の患者データなどは統合されていなかった。製薬企業の部門で言えば、研究開発部、臨床開発部、営業部がそれぞれの所管になる。だいたい想像はつくよね、、、データが部門をまたぐのは大変。
③医療機関、製薬企業の情報障壁
上市後の薬を使用するのは患者であり、それを処方するのは医師だ。投与後の結果(データ)を追跡調査できるのは医療機関である。しかしこのデータが開発元である製薬企業に正確に伝わっていなかった。規制上定められたモニタリングはなされているが、患者それぞれの症状、病歴、薬の飲み合わせなどなど詳細なデータは伝わっておらず、貴重な生データが放置されていた。
これらの情報障壁を取っ払ってクリアデータをデータベースにストックし整理する。これに様々な解析視覚を加えて、創薬、医療に活かすというストーリー。
どうだい?これはAIの進歩か? 違うよね。日本経済新聞社ともあろうものが、なんともお粗末な記事だなと思った。
でもねこの記事で紹介されいている製薬企業さんは立派だと思うよ。これはある意味、組織大改革なんだよ。サラリーマンがこういうことやるのって大変じゃない。もの凄いリスクがあるよ、人生のリスクね。こういうアクションに、「今更感満載」というコメントするヒト多いけど、まずはやってみなきゃわからないし、みんな分かってたんだけど誰もやらなかったことを最初にやるのって凄いと思うよ。だから陰ながら応援してます。
ちょっと論旨から外れるんだけど最後に言いたい放題言うよ。
「電子カルテ」って言葉、いつから出ている?20年以上前から言われているよね。でもまったく普及していないよね。せいぜい急性期病院内で活用されているだけで、全国で統一されたフォーマットがあるわけでもないし、医療機関をまたぐデータ共有はまったくなされていない。
このデータが宝の山であることは医療関係、創薬関係の誰もが分かっていること。現在、日本の製薬企業はグローバルに沈み始めている。宝の山を「フジヤマキレイ」とばかりに観賞用にしてはいけない。これを活用しないと。
オイラよく思うんだ。日本人ってとても細かいじゃない、丁寧じゃない。だから医療機関にストックされている患者データって、諸外国のそれよりも質が高いと思うんだよね。この情報を統合プラットフォームにしたらとんでもないことになると思わない?おまけに日本は世界最速で超高齢化社会に突入する。そこで得られるデータは他国の持ち合わせていない、最新にして最良のデータになるのは間違いない。
これが出来ない理由は明白だけど、変えられないのも承知している。勿論、自分でやることは絶対に無理。だから自分達の手の届く範囲で、このミニチュア版をやるんだ。それが成功すれば、それを別分野で模倣する人たちが出てくると思う。小さな積み重ねで大きなものが最終的に動けばいい。そんな夢を最近見ている。
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