キリンカップ ブルガリア戦の評価

キリンカップ（親善試合）はロシアＷ杯最終予選（9月～）に向けた最後の実戦テストの場である。その初戦である日本（ＦＩＦＡ53位）対ブルガリア（同69位）は7対２の快勝となった！！！

結果だけを評価してもとても良いゲームだった、隠れた成果を箇条書きすると、

• ラインを高く保ち、ボールを失った際も早い段階で相手の攻撃の芽をつむハリルの戦術が浸透してきた。
• 本田がいなくても機能する戦術であることを証明した。
• 競争の中でもチームのムードがとても良いことが分かった。
• ハリルが選手たちの指示に従い浅野にＰＫを蹴らせた。
• この件をハリルは「ご褒美です」と言った。

色々書きたい事はあるんだけど絞ってコメントすると、戦術理解と戦術の実践がいよいよ噛みあってきた点が成果だろう。そしてホンダがいない状態でもやりたいサッカーが出来た点が今後に期待を持たせる。

前半のサッカーは見事としかいいようがない。ひょっとすると本田がいなかったから上手く行ったのではないかと考えたくなるほどである。

ハリルのサッカーはシンプルだ。攻撃も守備も基本的な考え方は同じ。サッカーの攻撃において重要なことは、攻撃に入った時に最初の選択肢が多いこと、そしてその選択の後に続く選択肢も多い方が良い。簡単に表現すれば、最初の選択肢が３つあって、その先の選択肢がそれぞれ４つあったとすると、攻撃に転じた時にチームが保有する戦術は合計12個になる。

この１２の展開を共有し、先回りして選手が連動することで、ダイレクトパス中心に相手を混乱させるダイナミックな攻撃が実現する。

守備はこの逆だ。相手がこれと同じサッカーをしようとするならば、最初の選択肢の３つのうち２つを先に潰してしまえば良い。そうすれば相手の保有する戦術は４つしかない。相手の攻め口を４つに絞れるから守備はしやすくなる。これを実現するのが①早めに相手の攻撃の芽を摘み取る事、②その為にラインを高く保つことである。

すごく乱暴に書いてしまったが、こんな感覚だよね。でもこれをチームとして具現化するのは大変。試合中選手たちは同じ発想で予測⇒準備⇒実行⇒予測を繰り返さなければいけないし、同じ予測、準備、実行をできる選手が多くないと戦えない。でも前半はそれが出来てたよね。

「ブルガリアは格下だから」とか「ブルガリアは観光気分だから」とか言う人がいるけど、これは正直半分正解だね。確かにブルガリアもＷ杯最終予選を控えており色々テストはしたいと思うけど、ブルガリアリーグは先週最終節を終えたばかりだし、こんなところで怪我人を出したくない。だからコンタクトプレーも少なかったでしょ。

ブルガリアが色々試したという意味では、前半は守備面のテスト、後半は最終予選に向けたカウンターのテストという感じだったのかな。テレビを見ていてよく分かったと思うけど、日本の最終ラインがセンターサークルのすぐ後ろ位まで上がっていた。そして選手たちがセンターサークルのバンド内（直径18メートル程度）に凝縮していた。

そういう意味で裏を狙うチャンスはいくらでもあった訳だ。日本が早い段階で攻撃の芽を摘んでしまうから裏を取れなかったというのもあるんだけど、サイドを使って裏に抜けていくチャンスは前半も結構あったよね。

しかし後半はそれで2点取られたし、明らかに崩されていた。選手交代があったので戦術が変わった（崩れた）と言う点を割り引いて考えなければいけないけど、明らかに「ブルガリアはやれていた」と言える。

お互いにテストしたい事をテストし、日本はいい結果を得ることが出来たという評価かな。

で、、、話が変わるんだけど、Ｕ－２３代表のＦＷ浅野だよね。終盤に投入されてワンチャンスをものにしてＰＫゲット。ハリルはキッカーに宇佐美を指名したが、本田をはじめとしたベンチの選手たちが「浅野に蹴らせろ」と下剋上。鉄の心と意思を持つと思われたハリルは、「キッカーは浅野で良い」と本田たちのリクエストを飲んだ。

浅野はＰＫを成功しＡ代表初ゴール、浅野を押した本田たちは歓喜し、ハリルは試合終了後のインタビューで「ご褒美です」と言った。チームの風通しがいいんだね。そして若手を育てるという意識が共有できている。これは素晴らしいことなんだよね。

まだまだまだまだ、日本のレベルは低い。ここで油断なんかできない。決勝戦のボスニアはフル代表ではない模様だが明らかに格上。この戦いでは勝利を目指すよりも今回のブルガリアのようなテストをして欲しい。

前半はラインを高く保つ相手に対し、相手の攻撃を早い段階で積みながらも自分たちのラインは持ち上げずカウンター戦術。基本的にボールを相手に持たせる戦略です。

後半はブルガリア戦の前半のような自分たちでゲームを支配する戦略。欧州の上位国相手にどこまで出来るかテストをして欲しい。

あ～～～結局長いコメントになっちゃった（笑）　最後にひとこと言わせて。ハリルのことを酷評していた協会及びその取り巻き連中はハリルに謝った方がいい。出来ることならばさっさと退陣して欲しい。

さて次は来週火曜日か。平日はじっくり見れないかもしれないけど、あとからビデオでしっかりと観たいな。それくらい見ごたえのある動きになってきたね！