最近書いたレポート。正直内容はイマイチです。馬鹿は喧伝しないと治らないのでアップします。突っ込み歓迎!!
中核的な技術を持たないことは他社との競争における弱みと考え、その理由を以下に論じる。最初に中核的技術を持つことの優位性を述べ、新商品開発におけるプロダクトアウト戦略の有効性について説明する。次に組織、人材マネジメントによる中核的技術を促進させる仕組みについて論じ、最後に見解を述べたい。
中核的技術は集中的な研究開発投資と長期的な取り組みから構築される。その利点は中核的技術がヒット商品を生み出したとき、模倣困難性から競合他社が追随しにくい点にある。一方デメリットとしては中核的技術を活用した商品がヒットしなかった場合、研究開発費が他に回っていない分、競争力のある商品を生み出しにくい点が挙げられる。このリスクを回避するために様々な技術に分散投資すると、技術的な優位性を構築することが難しくなる。このように中核的技術の構築は両刃の剣である。しかし中核的技術を経営戦略の軸として商品開発の好循環を生み出し、組織・人材マネジメントによる全社的、中期的な取り組みができれば、中核的技術を持たない企業との差別化を図り、商品開発における優位性を確立することができる。
例としてシャープの液晶技術活用を挙げる。同社は1970年から液晶技術開発を始め、1973年に初めて電卓の商品化に成功した。その後、この液晶技術を他の商品にも応用し、腕時計、ワープロ、電子システム手帳、液晶ビューカム、携帯電話などをヒットさせた。この開発リレーにおいて特徴的な点は、中核的技術である液晶を新分野において進化させながら転用していることである。液晶技術を持たない競合他社はそれぞれの局面において技術開発に時間がかかり、シャープに先行者メリットをもたらした。またシャープは、他社が類似商品を開発している間に、次の商品開発と技術の更なる進化に注力することができた。このようにシャープは中核的技術を活用した商品開発と技術の発展で中期的に、中核的な技術を持たない企業に対し比較優位を維持した。この点において中核的な技術を持たないことは競争戦略上弱みになると言える。
次に新製品開発におけるプロダクトアウト戦略の優位性を述べたい。マーケティングにおいて顧客ニーズは顕在化されたニーズとして抽出される。そして顧客の顕在ニーズに堪える新商品を開発することをマーケットイン戦略という。マーケットイン戦略は外れが少ないことから一般的には良い結果をもたらすことが多いが、多くの企業が同様のアプローチで似通った新商品を開発する傾向がある。よって市場拡大期など市場環境が良く、収益性の高い状況においては有効な戦略と言えるが、競争の厳しい環境においては低収益かつ商品のライフサイクルを縮めることにもなる。一方、プロダクトアウト戦略は新商品開発において中核的技術の進化と転用を試み、マーケティングでは抽出されない顧客の潜在ニーズを喚起する戦略である。このような新商品が顧客の潜在ニーズを発掘した場合、他社の追随には時間がかかり、先行者メリットと強固なブランディングを獲得することができる。プロダクトアウト戦略は中核的技術を市場創出型で発展させる戦略であり、中核的技術を持たない企業がこの戦略を採用するのは難しい。このように中核的技術を持つ企業はマーケットイン戦略とプロダクトアウト戦略双方のアプローチが可能であるが、中核的技術を持たない企業はマーケットイン戦略が一般的なアプローチとなる。競争戦略において競合他社対比で選択肢が少ないことはデメリットであり、中核的技術を持たないことは弱みと言える。
次に中核的技術の発展と組織、人材マネジメントとの関係について述べたい。3Mとシャープは中核的技術を活用した経営戦略で成功した企業の代表例である。両者の成功には組織、人材マネジメントが深く関係している。両者は事業部制を採用しているが、中核的技術を活用した新商品開発においては、事業部間の壁を取り払う運営がなされており、中核的技術が全社的に活用されやすい組織構造とシステムが採用されている。
また3Mにおいては、技術者が自社の中核的技術を用いた新商品開発のために、就業時間の15%を好きなように使うことができる。加えて事業部の壁を越えた技術者間のコミュニケーションも励行されており、中核的技術の進化、転用に成功した場合は高く評価される仕組みを取り入れている。このように中核的技術を発展させるためには、それを促進させる組織、人材マネジメントが必要である。一方、中核的技術を持たない企業は技術を媒介にした組織、人材マネジメントの仕組みを取り入れることが出来ない。これが事業部間の技術、情報、人材の交流を妨げ、全社的なムーブメントを創出しづらくしている。この観点からも中核的技術を持たないことは経営戦略においてハンデを背負っていると言えるよう。
ここまで述べてきたように中核的技術を持たないことは戦略上弱みとなることが多い。しかし中核的な技術を持つ企業もその優位性を発揮するために、技術の進化と新商品への転用を中期的に継続する必要がある。よって中核的な技術を持ち、それを効果的に運用することが強みであり、中核的技術を持たない企業はそのオプションを保有していないという点で弱い立場にある。
技術の進化と転用においては以下の3点が重要と考える。①技術の進化、転用の継続的な積み重ね、②顧客の潜在ニーズを発掘するプロダクトアウト戦略、③中核的技術の進化、転用を促進させる組織的な取り組み。
デジタル化、グローバル化、モジュール化が進む産業において商品、技術のライフサイクルは短期化傾向にある。リーマンショック以降、株主や銀行の要請などから日本の電機メーカーは財務リストラに走る傾向が強かった。しかし「自前で儲かりにくいところはよそにやってもらう。それが儲かるビジネスモデルだ。」(2012年7月7日「日本経済新聞 パナソニック津賀社長インタビューより」)という発想は、短期的な財務収益を向上させる上では評価できても、中核的技術を構築する発想とは受け取れない。技術開発には適度の無駄が必要であり、それには時間とコストがかかる。しかし財務重視の経営に注力し、この無駄を許容できなければ独自の中核的技術を発掘することはできず、製造業としての中長期的な発展も限定されてしまう。中核的技術を持たぬまま他社のヒット商品の追随を繰り返せば価格競争に巻き込まれる可能性が高いだけでなく、そのループから抜け出せずに中期的な弱体化を招く恐れもあるからだ。この悪循環に追い込まれないために、中核的技術を保有するとともに、あらゆる商品分野に進化、転用させる全社的な取り組みが重要なのである。
参考文献
延岡健太郎(2006) 「MOT[技術経営]入門」 日本経済新聞出版社
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