牛の生涯を高校の卒業式と捉えた同社のCMに様々な意見が飛び交っている模様です。そもそも1年くらい前の動画広告みたいですけどね。。。(オイラは知らなかったけど)
様々なコメントを読むと、それぞれの視点があり、皆様ごもっともという印象を受けます。しかし、現在牛関係の研究に携わる者としては、まったく別の視点がありまして、ちょっとコメント。
ひょっとして、この作品は牛のライフサイクルに精通した、酪農経験者、繁殖経験者が作ったのではないか?という仮説。
皆様、あまりご存じの無い世界にこれから突入します。
牛の生涯は人間に決められていると言っても過言ではない。より詳しくいえば、その時間(いつまで生きる?)、どのように生きる(どんな生活?)かも、人間に決められている。例えば、、、
種雄牛(肉牛)の生涯は、エリートと呼ばれる種であれば天寿(20歳まで生きるのもいる)を全うするまで、いい飯を食って、適度な運動ができて、ストレスのない生活をして、毎週採精(精液を採取)される仕事をする。
繁殖牛(肉牛の雌)の生涯は、エリート血統の雌であれば授精が可能な限り、いい飯を食って、適度な運動ができて、ストレスのない生活をして、ほぼ毎年出産する仕事をする。ここで混同してはいけないのは、この牛は乳牛ではないので、乳しぼりをされることもない。しかし末路と言う意味では、受精能力が落ちると突然美味い飯を大量に食わされて肉になる。
搾乳牛(乳牛の雌)の生涯は、適齢期以降受精能力が落ちるまで妊娠し続ける。子どもを産み続けないと搾乳できないからだ。しかし搾乳量のピークアウト問題などから、近年では7歳くらいで乳牛としての仕事が終わり、突然美味い飯を大量に食わされて肉になる。
肉用牛(肉牛の雄、雌)の生涯は、血統の有無を問わず、28-33か月程度だ。筋肉がつきすぎると肉質が落ちるので、狭い牛舎で一生涯を、管理されたメシで過ごす。人間で言うと4畳半に4人で生涯生活するような感じだ。そして最後はかなりの肥満児になっている。そして彼らは生殖行為を経験することなく肉になる。
細かく言うと、もっと沢山あるのだが、これだけでも彼らの生涯がいかに【職種】によって差があり、それを人間の勝手で決められているかをご理解いただけると思う。
そしてこの動画広告。最期の場面で、ヒロインがブレンディコーヒー用の乳牛になるということでハッピーエンドを迎える。ここまで辛抱強く読まれた方は疑問に思うのではないか???『乳牛は7歳で肉になってしまうんだろ?』
実はこの場合はNOなんです。ブレンディは『濃い乳を出す乳牛』を採用しており、このヒロインはその試験に合格したことになる。実は普通の乳牛と濃い乳を出す乳牛はまったく違うのです。
品種改良が進む昨今、普通の乳牛は20年前と比べて2倍以上の乳を出すようになりました。それでも濃い乳については現在でも昔ならではの搾乳方法で、まいにち少量ずつ搾乳する方式をとっています。そして餌も、運動も適度にさせて、ストレスのない人生を送ります。
またこのような乳牛たちは、普通の牛にくらべて大切に育てられる分、繁殖能力も高く、10歳を超えても授精を続けます。
ご理解いただけたでしょうか?濃い乳を出す牛は、普通の乳牛に比べて、QOL(Quality of Life)が高いのです。だからこの動画広告は『牛生産者目線』に立てば納得のいく部分も多いのです。
ただね、、、、QOLで言えば、エリート種雄牛(肉牛)であるのは間違いないんですけどね。長文失礼しました。
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